上を向いて歩こう 涙がこぼれないように
2007年12月07日 20:43:00



バギオで活動している環境NGO。CGN(コルデェリアラ グリーン ネットワーク)主催のエコシアターフェスティバルが12月1、2日に開催されました。
1500人近く入る劇場で子供達の舞台の演出をしました(私は演出家ではありません汗)
カリンガ、マウンテン、アブラ、ベンゲット、イフガオ州という5つの山岳地域から5つの子供劇団がはるばるバギオを訪れ、このエコサミットシアターフェスティバルに参加し、私はその中のカリンガ州の演出担当でした。演劇に新しい風を吹かせたいということで日本人の私が任命されたのでした。
まったく詳しい情報を仕入れずこの仕事を引き受けてしまった私。
初めて下見をかねて演劇ワークショップでカリンガを訪れたのは8月の半ば。
その時からすでに焦っていました汗
というのは、何にも出来ない子供達。自己紹介さえまともにできない。声をかけても恥ずかしそうに隠れる。
この子達が役者?舞台に立つっていうの?
電気もTVも無いこの子達にとって「お芝居って何?」ってな状況から始まったわけ。
他の4つの州は劇団があり、多少なりにも演技経験がある子達なのですが、ここカリンガだけはオーディションを行ない、新しく劇団を作ったのです。
そんな状態だったものだから、私も覚悟決めてカリンガの文明ゼロの山の奥底に身をうずめることにしたのです。カリンガがどんな所かも知らぬまま。。。。
実はカリンガは民族紛争がまだ残っており、フィリピン人にさえ恐れられている場所でありました。
この梅雨の時期、雨が降るたびに土砂崩れ。車が通れません。
私は土砂崩れの上を歩きました。倒れている木の下をくぐりました。グチャグチャの山道を裸足で登りました。
大雨の中、傘ささずに大荷物を持って歩きました。
時には夜中に4時間以上山を登りました。その時に見た満月は絶対に忘れられません。
豚と犬とニワトリとヒヨコと牛と馬も一緒に生活していました。
新鮮な空気を思いっきり吸い、観た事もない木々に心を洗われ、自然との一体感を心の底から感じました。
欲をが無くなった時、世界はこんなに素敵なんだって気づきました。
電気ってものが無いので、太陽と共に1日が始まり、月と共に1日が終りました。(早すぎっ)
子供達に何を教えたらいいのか、どうしたら分かってもらえるのか、悩んで悩んで泣きました。
めちゃくちゃ子供達を怒鳴りつけたこともありました。
頼りにならない頭の悪い先生と喧嘩しそうなのをいつも堪えていました。
助けてもらうはずのこのプロジェクトの主催者、ミュージシャン、ア−ネルは自分の仕事で忙しく結局当てにならない。
でも妥協はしたくない。「何だあの日本人の演出家は」なんて言われたくなかった。
あたし演出家じゃないもん、なんて言い訳は通じない。
さて。振り返ってみると。。。。
私がここに住んでいなかったら何も生まれなかっただろう。
脚本もできなかった。カリンガの素敵な文化を知ることも出来なかった。共有することもできなかった。
子供達との信頼関係も生まれなかった。。。
これだけ誇れること。ここに住んだから舞台が完成した。
この舞台は名付けて「カリンガの13人の子供と知子の共同日比新作舞台」です(長いです)
そしてそして一生忘れないだろうこの日、12月1、2日(土日)エコサミットフェスティバル。
カリンガは2日が本番。
なんせ5つの劇団があるから満足に舞台が使えない。しかしどこの劇団も凄い、、、上手い。ホントに高校生?
うちの子達と全然レベルが違う。。。はは。。。なーんて比べてる暇はない。とにかく稽古稽古。舞台の入口と出口、小道具、衣装確認して、、、え!?衣装がない?買って?しかもイヤリングが欲しい?
何でもっと前に言わないのよ〜!!!! 先生に買って来てもらおう、先生はどこ?。。。は?従妹の家に行った? 。。。プチン(キレた私)(あほーー一生帰って来るなーーー)
前々から思っていたんだけど、リハーサル直前改めて心に決めた。「フィリピン人と仕事は絶対しない」
リハーサルなのに音響、照明が来てないんですけど。え、昼12時に来るって? 何言ってんの、14時からプログラム始まるんですけど。。
アタシは知ってます。12時に来ると言ったら13時に来るのがフィリピン人。
もう頭に来た私はア−ネルに「あたし音響やるから」と吐き捨てた。
帰ってきた返事が「ボク照明やるから、指示して」
。。。。
結局舞台のストーリーを一番良く知っている私とア−ネルがリハ無しで本番に望む事になったのです。
始まりました。本番。。。。。。
舞台上での通しリハーサルが一度も出来ない状態で始まったステージショー。
オープニングの影絵。あれ、子供達が動かない、ここシャドームービングだよ。動け!踊れ!踊れーー!
あれ、全然予想だにしなかった所で客がうけてる。。。なんで?
客の笑い声で子供の声が聞こえないんですけど、、これ大事な台詞なのに!
黙れ客! と心の中で叫ぶ。。。あ、音楽音楽と。。。あー!照明照明!違う!この照明じゃない!ア−ネル変えて!
おいおい!子供達!舞台覗いてるの舞台裏から見えてるよ〜あれほど覗くなと言ったのに〜。。
こら主役!出番出番!あ、小道具忘れてる!。。あ、取りに行った。良かったーーー。
ア−ネル、このシーンの後暗転ね、あ、ちょっと!まだまだ!このシーンの後だって!ここね、いくよ。せーの、、ありゃりゃ主役〜、暗転前に小道具片づけてるよ〜。。。。。
と、落ちついて舞台を見てる暇はありませんでしたが、ずっとア−ネルと笑っていました。もうこうなったら焦っても何言ってもしょうがないからね。
私、最後の最後にやってしまいました。最後のお客さんへの挨拶。教えるの忘れてたーーーーー。。。。フィナーレのダンスの後、挨拶も無しに舞台裏にはけ、それからもう子供達は舞台には出て来ませんでした。。。
ごめんごめん 汗
そして舞台は幕を閉じました。
技術とかテクニックなんて全くないけど、真っ直ぐでピュアな自分らしい演技のおかげで、なんと舞台は大好評だったのです♪まったく想像していなかった反応が返ってきました。あは。
私的には練習の方が良く満足はいってなかったのだけど、お客さんに喜んでいただければそれが一番。
こんなに客を笑わせ、最後は客を涙ぐませた子供達、良くやってくれました。
初めての舞台でここまで出来れば十分だね。
他の演出家が褒めてくれました。一人は「カリンガの子供達に恋をしたよ」と言ってカリンガに住むと言い張っています。そしてカリンガの子供達は来年の演劇祭りに招待されたのです。
嬉しい♪ 次のチャンスをもう掴んだこの子達。頑張って欲しいな。
こうしてカリンガの子供達ははるばる14時間かけて山から町に下り文明を見て、大きな感動と軌跡をバギオに残し、そしてまた新たな可能性を手に入れカリンガに帰って行きました。
バギオにジープで一緒に来る時、13人中13人が車酔いで1日吐きどうし。ジープはゲロまみれ。
帰りは大丈夫かな?
アタシはもう一緒には帰れない。
ありがとう、本当にありがとう。厳しくってごめんね。いっぱい怒ってごめんね、
最後の最後までしたってくれてありがとう。信じてくれてありがとう。
こんなおっきい舞台で初舞台、良くやったよ。凄いよ。
なんてことを話してる間に涙が溢れてきてもう話す事も出来なくなった。
子供達も泣いている。だめ泣かないでよーーー
笑顔で見送ろう、笑顔で。と頑張って笑顔を作る。でもホントこの涙は止まらないのね。
「Don't cry Don't cry!」「泣かないで」
分かってるよ!でも泣かずにはいられないんだっちゅー^の。
ちょーブサイクな笑い泣き顔で子供達とさよならした。
そして子供達が帰った後もアタシは一人で泣き続けていた。大人げもなく。
その後にバギオ観光に連れてってもらったのだけど、その時も涙をこらえられない私。
バギオにお別れ。フィリピンにお別れ。
この舞台が終ったら帰国しようと決めていた。全てが終ろうとしている。私のあての無い旅。
(1つ教訓。海外に行く時は金を貯めてから行くべし)
巡り巡って最後に芝居に導かれた。
私がフィリピンで教えてもらったこと
Human is connected with nature.
People is connected with people
Present is connected with the past and the future
Everything is connected to everything else
人間と自然は繋がっている
人と人は繋がっている
現在は過去と未来と繋がっている
すべては繋がっている
ア−ネルが坂本九の「上を向いて歩こう」を歌い始めた。
(彼はこの歌詞の意味を分かって歌ってません。。)
♪うえを向いて歩こう 涙がこぼれないように♪ 泣きながら歩く 一人ぼっちの夜
幸せは雲の上に 幸せはソラの下に〜♪
えーーー、今この歌ですかああ。。
上を向いて歩いても涙はこぼれ、いえ、溢れていました。
そうやって私の仕事は幕を閉じたのでした。
よし!もうフィリピンに未練はない!
っはい。日本に帰ります。今月。いよいよ。やっと。
また新しい生活♪
写真1。ラストシーン
写真2。パットダンス。頭に壺を2、3個重ねて踊るのです
写真3。13人の子供と2人の先生とア−ネルと私
1500人近く入る劇場で子供達の舞台の演出をしました(私は演出家ではありません汗)
カリンガ、マウンテン、アブラ、ベンゲット、イフガオ州という5つの山岳地域から5つの子供劇団がはるばるバギオを訪れ、このエコサミットシアターフェスティバルに参加し、私はその中のカリンガ州の演出担当でした。演劇に新しい風を吹かせたいということで日本人の私が任命されたのでした。
まったく詳しい情報を仕入れずこの仕事を引き受けてしまった私。
初めて下見をかねて演劇ワークショップでカリンガを訪れたのは8月の半ば。
その時からすでに焦っていました汗
というのは、何にも出来ない子供達。自己紹介さえまともにできない。声をかけても恥ずかしそうに隠れる。
この子達が役者?舞台に立つっていうの?
電気もTVも無いこの子達にとって「お芝居って何?」ってな状況から始まったわけ。
他の4つの州は劇団があり、多少なりにも演技経験がある子達なのですが、ここカリンガだけはオーディションを行ない、新しく劇団を作ったのです。
そんな状態だったものだから、私も覚悟決めてカリンガの文明ゼロの山の奥底に身をうずめることにしたのです。カリンガがどんな所かも知らぬまま。。。。
実はカリンガは民族紛争がまだ残っており、フィリピン人にさえ恐れられている場所でありました。
この梅雨の時期、雨が降るたびに土砂崩れ。車が通れません。
私は土砂崩れの上を歩きました。倒れている木の下をくぐりました。グチャグチャの山道を裸足で登りました。
大雨の中、傘ささずに大荷物を持って歩きました。
時には夜中に4時間以上山を登りました。その時に見た満月は絶対に忘れられません。
豚と犬とニワトリとヒヨコと牛と馬も一緒に生活していました。
新鮮な空気を思いっきり吸い、観た事もない木々に心を洗われ、自然との一体感を心の底から感じました。
欲をが無くなった時、世界はこんなに素敵なんだって気づきました。
電気ってものが無いので、太陽と共に1日が始まり、月と共に1日が終りました。(早すぎっ)
子供達に何を教えたらいいのか、どうしたら分かってもらえるのか、悩んで悩んで泣きました。
めちゃくちゃ子供達を怒鳴りつけたこともありました。
頼りにならない頭の悪い先生と喧嘩しそうなのをいつも堪えていました。
助けてもらうはずのこのプロジェクトの主催者、ミュージシャン、ア−ネルは自分の仕事で忙しく結局当てにならない。
でも妥協はしたくない。「何だあの日本人の演出家は」なんて言われたくなかった。
あたし演出家じゃないもん、なんて言い訳は通じない。
さて。振り返ってみると。。。。
私がここに住んでいなかったら何も生まれなかっただろう。
脚本もできなかった。カリンガの素敵な文化を知ることも出来なかった。共有することもできなかった。
子供達との信頼関係も生まれなかった。。。
これだけ誇れること。ここに住んだから舞台が完成した。
この舞台は名付けて「カリンガの13人の子供と知子の共同日比新作舞台」です(長いです)
そしてそして一生忘れないだろうこの日、12月1、2日(土日)エコサミットフェスティバル。
カリンガは2日が本番。
なんせ5つの劇団があるから満足に舞台が使えない。しかしどこの劇団も凄い、、、上手い。ホントに高校生?
うちの子達と全然レベルが違う。。。はは。。。なーんて比べてる暇はない。とにかく稽古稽古。舞台の入口と出口、小道具、衣装確認して、、、え!?衣装がない?買って?しかもイヤリングが欲しい?
何でもっと前に言わないのよ〜!!!! 先生に買って来てもらおう、先生はどこ?。。。は?従妹の家に行った? 。。。プチン(キレた私)(あほーー一生帰って来るなーーー)
前々から思っていたんだけど、リハーサル直前改めて心に決めた。「フィリピン人と仕事は絶対しない」
リハーサルなのに音響、照明が来てないんですけど。え、昼12時に来るって? 何言ってんの、14時からプログラム始まるんですけど。。
アタシは知ってます。12時に来ると言ったら13時に来るのがフィリピン人。
もう頭に来た私はア−ネルに「あたし音響やるから」と吐き捨てた。
帰ってきた返事が「ボク照明やるから、指示して」
。。。。
結局舞台のストーリーを一番良く知っている私とア−ネルがリハ無しで本番に望む事になったのです。
始まりました。本番。。。。。。
舞台上での通しリハーサルが一度も出来ない状態で始まったステージショー。
オープニングの影絵。あれ、子供達が動かない、ここシャドームービングだよ。動け!踊れ!踊れーー!
あれ、全然予想だにしなかった所で客がうけてる。。。なんで?
客の笑い声で子供の声が聞こえないんですけど、、これ大事な台詞なのに!
黙れ客! と心の中で叫ぶ。。。あ、音楽音楽と。。。あー!照明照明!違う!この照明じゃない!ア−ネル変えて!
おいおい!子供達!舞台覗いてるの舞台裏から見えてるよ〜あれほど覗くなと言ったのに〜。。
こら主役!出番出番!あ、小道具忘れてる!。。あ、取りに行った。良かったーーー。
ア−ネル、このシーンの後暗転ね、あ、ちょっと!まだまだ!このシーンの後だって!ここね、いくよ。せーの、、ありゃりゃ主役〜、暗転前に小道具片づけてるよ〜。。。。。
と、落ちついて舞台を見てる暇はありませんでしたが、ずっとア−ネルと笑っていました。もうこうなったら焦っても何言ってもしょうがないからね。
私、最後の最後にやってしまいました。最後のお客さんへの挨拶。教えるの忘れてたーーーーー。。。。フィナーレのダンスの後、挨拶も無しに舞台裏にはけ、それからもう子供達は舞台には出て来ませんでした。。。
ごめんごめん 汗
そして舞台は幕を閉じました。
技術とかテクニックなんて全くないけど、真っ直ぐでピュアな自分らしい演技のおかげで、なんと舞台は大好評だったのです♪まったく想像していなかった反応が返ってきました。あは。
私的には練習の方が良く満足はいってなかったのだけど、お客さんに喜んでいただければそれが一番。
こんなに客を笑わせ、最後は客を涙ぐませた子供達、良くやってくれました。
初めての舞台でここまで出来れば十分だね。
他の演出家が褒めてくれました。一人は「カリンガの子供達に恋をしたよ」と言ってカリンガに住むと言い張っています。そしてカリンガの子供達は来年の演劇祭りに招待されたのです。
嬉しい♪ 次のチャンスをもう掴んだこの子達。頑張って欲しいな。
こうしてカリンガの子供達ははるばる14時間かけて山から町に下り文明を見て、大きな感動と軌跡をバギオに残し、そしてまた新たな可能性を手に入れカリンガに帰って行きました。
バギオにジープで一緒に来る時、13人中13人が車酔いで1日吐きどうし。ジープはゲロまみれ。
帰りは大丈夫かな?
アタシはもう一緒には帰れない。
ありがとう、本当にありがとう。厳しくってごめんね。いっぱい怒ってごめんね、
最後の最後までしたってくれてありがとう。信じてくれてありがとう。
こんなおっきい舞台で初舞台、良くやったよ。凄いよ。
なんてことを話してる間に涙が溢れてきてもう話す事も出来なくなった。
子供達も泣いている。だめ泣かないでよーーー
笑顔で見送ろう、笑顔で。と頑張って笑顔を作る。でもホントこの涙は止まらないのね。
「Don't cry Don't cry!」「泣かないで」
分かってるよ!でも泣かずにはいられないんだっちゅー^の。
ちょーブサイクな笑い泣き顔で子供達とさよならした。
そして子供達が帰った後もアタシは一人で泣き続けていた。大人げもなく。
その後にバギオ観光に連れてってもらったのだけど、その時も涙をこらえられない私。
バギオにお別れ。フィリピンにお別れ。
この舞台が終ったら帰国しようと決めていた。全てが終ろうとしている。私のあての無い旅。
(1つ教訓。海外に行く時は金を貯めてから行くべし)
巡り巡って最後に芝居に導かれた。
私がフィリピンで教えてもらったこと
Human is connected with nature.
People is connected with people
Present is connected with the past and the future
Everything is connected to everything else
人間と自然は繋がっている
人と人は繋がっている
現在は過去と未来と繋がっている
すべては繋がっている
ア−ネルが坂本九の「上を向いて歩こう」を歌い始めた。
(彼はこの歌詞の意味を分かって歌ってません。。)
♪うえを向いて歩こう 涙がこぼれないように♪ 泣きながら歩く 一人ぼっちの夜
幸せは雲の上に 幸せはソラの下に〜♪
えーーー、今この歌ですかああ。。
上を向いて歩いても涙はこぼれ、いえ、溢れていました。
そうやって私の仕事は幕を閉じたのでした。
よし!もうフィリピンに未練はない!
っはい。日本に帰ります。今月。いよいよ。やっと。
また新しい生活♪
写真1。ラストシーン
写真2。パットダンス。頭に壺を2、3個重ねて踊るのです
写真3。13人の子供と2人の先生とア−ネルと私